社会的孤立状態にある人と“訪問型支援”実践者のために

社会的孤立状態にある人と“訪問型支援”実践者のために

アウトリーチ(訪問型支援)という新しいカタチの支援の普及と、メンタルヘルス支援ニーズのある人を中心に、社会的孤立状態にある人たちが地域の中で自分らしい暮らしができる社会の実現を目指している一般社団法人コミュニティ・メンタルヘルス・アウトリーチ協会(アウトリーチネット)。代表理事である梁田英麿氏に活動に込める想いや協会の特色などについて話を聞いた。

白衣を脱ぎ生活の場に出向く

――設立から現在のまでの流れを教えてください。

梁田 当法人は2020年12月に一般社団法人化した組織です。それまではACT全国ネットワーク(ACTネット)として活動をしていました。ACTネットで培ったアウトリーチに関するノウハウを多くの方々と共有できるよう、新しい法人では「ACT部会」「子ども・若者支援部会」「訪問医療部会(病院型・診療所型)」「訪問支援・訪問看護部会」「地域づくり部会」という部会組織を設けています。昨年度は組織としての基盤強化に力を注ぎつつ、オープニングセレモニーや実践者向けのオンライン研修会などを開催しました。

──前身のACTネットとは?

梁田 ACT(Assertive CommunityTreatment)とは1970年代に米国で始まった重い精神障害のある人たちを地域で支えるプログラムです。 きっかけは、それまで一般的だった精神科病院への強制的な長期入院が、精神障害のある人に対する人権侵害にあたるという認識に変わってきたことでした。そこで、自宅を中心とした地域でケアを行うケアマネジメントという新しいサービスが開発されたのです。しかし、重い精神障害のある人の場合は、既存のケアマネジメントだけでは病院から地域へうまく移行できない状況が続きました。
そんな時、ウィスコンシン州のメンドータ州立病院では、医療従事者たちが白衣を脱ぎ捨て、当事者の生活の場に出向くカタチで、治療だけでなく生活支援全般を24時間体制で行うようになりました。これがACTの始まりです。
日本では2001年に茨城県の「KUNINA」がACTの活動を開始し、その後は各地でACTチームが立ち上がりました。そして、日本でのACTの普及や質の向上を目指して09年に設立されたのがACTネットです。

2021年5月に元厚労省事務次官の村木厚子氏を招きオープニングセレモニーが行われた

2021年5月に元厚労省事務次官の村木厚子氏を招きオープニングセレモニーが行われた

──法人化の理由は?

梁田 ACTの支援があれば、日本でも重い精神障害のある人たちが暮らしたい場所で自分らしく暮らすことが可能になった反面、重い精神障害のある人を対象として厳密に規格化されたACTのカタチだけでは地域の多様なニーズに添いきれないことに、私たちは心を悩ませるようになっていました。
また、アウトリーチの現場では多職種が協働するので、看護師や精神科医など、職種ごとに所属できる職能団体はあっても、職種を超えるカタチで実践者たちが一堂に会することができる組織が見当たらないことも気がかりでした。
当事者の多様なニーズに対応していくためには、いろいろな領域のアウトリーチ実践者らが相補的に連携する必要性を感じていましたし、また、現場の最前線に立つ実践者自身もまたケアを受けられるような仕組みが必要だと考え、当法人を発足させました。

──法人の特色は?

梁田 一番は、社会的孤立状態にある人たちとの寄り合い方を大切にしているところだと思います。世の中には、専門職から支援を受けたことがきっかで、「世の中の正しさ」に傷つき、人と繋がることに後ろ向きになってしまっている当事者の数は少なくありません。
違う価値観や考えの人たちがぶつかりあったとき、偏見や差別を制御し、一緒にお互いの落としどころを見つけていく話し合いのプロセスが重要となります。特にアウトリーチの現場では、当事者の身になって、その人の言葉の背景を理解しようとする姿勢が求められているように思います。


「ホームタウン」のような法人へ

コミュニティ・メンタルヘルス・アウトリーチ協会の ホームページ

コミュニティ・メンタルヘルス・アウトリーチ協会の ホームページ

──HP制作に注力されているようですね。

梁田 はい。まずは当法人の会員の皆様に有益と思っていただけるコンテンツづくりを心がけてきました。アウトリーチに関連する情報のご提供だけでなく、チーム正会員の皆さまの求人情報を掲載させていただいたり、関連文献や現場で役立つツール集などを盛り込んだ「会員専用ページ」を開設したりしています。 とはいえ、ウェブに詳しい人材がいた訳ではなかったので、いくつかの候補の中から、サポート力の高さが決め手でアイ・モバイル株式会社さまに支援をお願いすることにしました。

──反響はいかがですか?

梁田 HPをご覧になられた報道機関や一般の方、当事者やご家族の立場の方からもご連絡をいただけるようになりましたので、一定の成果はあったと思っています。若い方から「将来アウトリーチの仕事に携わりたいがどうしたら良いか?」というご相談をいただいたこともうれしいことでした。

──支援者に恵まれましたね。

梁田 はい。幸いにも、TKC全国会に所属する税理士法人京都ビジコンさまが当法人の事務局を引き受けてくださることになりました。また、日本システム収納株式会社さまとも連携し、集金代行システムも新たに導入しました。会費の回収がスムーズになり、大きなメリットを感じています。アイ・モバイルさまも京都ビジコンの海来美鶴先生からのご紹介で知ることができたのです。

──今後の抱負を。

梁田 今年9月に全国大会を開催しますが、アウトリーチ実践者の「技術や知識、価値」の向上にお役に立てればと思っています。そして実践者たちが自らのホームタウンに帰省をして元気を取り戻せるような、そのような法人になりたいと思っています。


この度は取材にご協力いただきまして、ありがとうございました。

梁田英麿代表理事

梁田英麿代表理事

一般社団法人コミュニティ・メンタルヘルス・アウトリーチ協会
アウトリーチネット京都事務局
住所:京都府京都市下京区新町通四条下る347番地1 CUBE西烏丸3階 株式会社京都ビジコン内
TEL:075-344-5151
URL:https://www.outreach-net.or.jp

(インタビュー・構成/アイ・モバイル 株式会社)
株式会社TKC発行のビジネス情報誌「戦略経営者」に掲載された連載記事を掲載しております。

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