古布製オリジナル商品を開発した小さな工房の大きな挑戦

古布製オリジナル商品を開発した小さな工房の大きな挑戦

京都の住宅街の中にひっそりと佇む工房『季(とき)のくむ(以下、季のくむ)』は、古い着物生地(古布)で作る押絵技術を現代風にアレンジした工芸品「こころの玉手筥(ばこ)」を生み出し、世に送り出している。見るものをハッとさせる繊細で奥ゆかしい美しさに、感動する人も多いという。「こころの玉手筥」を考案・制作している代表の奥村 久美氏に、『季のくむ』ができるまでのストーリーや、これからの展望を聞いた。

約10年を経て世に出た「玉手筥」

奥村久美代表(手前)とスタッフ

奥村久美代表(手前)とスタッフ

――工房『季のくむ』で作っている商品について教えてください。

奥村久美 今メインで作っているのは、「こころの玉手筥」。古布と呼ばれるアンティーク着物の生地から手作業で作り出す、季節の花があしらわれた桐箱とそれに入ったリングピローです。
桜や椿など季節の花がモチーフになった、「こころの玉手筥」を制作するにあたり、型紙も本物の花を花びら1枚1枚まで分解し、写しとっています。工房のスタッフがそれをもとに生地を裁断し、縫い合わせて作っていく、非常に手間暇のかかった作品です。
同商品の魅力は、さまざまな使い方ができること。ご結婚時にはリングピローとして使い、お子さまが生まれたら臍帯筥(臍の緒ケース)としても、また、ジュエリーケースなど大切な宝物を入れておく箱としてもお使いいただけます。筥(はこ)の中の花は、髪飾りやバッグチャームとしても活用できます。
ご結婚時に手にされた「こころの玉手筥」が、ときの経過とともに、出産・お子様の成人、結婚式などさまざまなシーンで寄り添い、人生を彩るものになればいいなと思っています。


こころの玉手筥

こころの玉手筥

──製作の背景は?

奥村 もともと服飾デザイナーやコマーシャルフォトのアシスタントなどをしていたのですが、常に流行を追う仕事にだんだんと疑問を抱くようになり、時代や流行に左右されないものとは何かを考えるようになりました。
そんなときに、ふと本屋さんで手に取ったのが、縮緬細工を紹介した本でした。時代を経ても美しいと感じさせる豊かな色彩と、そのあたたかさ、はんなりとした風合いに感動。自分でも再現できないかと始めたのが、古い着物の生地を使った作品づくりでした。
あるとき、羽子板などにも使われている押絵の技術なども取り入れて、10年ほどコツコツと作り続けてきた古布を使った箱づくりを知人が目にして「これは世の中に送り出すべきだ!」と。その言葉に背中を押され、工房として季のくむを立ち上げることになりました。背中を押してくれた知人は、今では工房の大切なメンバーのひとりになっています。

──高度な技術が必要な商品ですが、どのような生産体制に?

奥村 現在は、私を含め4人の工房メンバーが制作にあたっています。作り方を覚えてもらうところから始め、最近は工房スタッフの技術レベルも上がってきて、制作もある程度任せられるようになっています。一人ひとり得意分野も異なりますので、作ることを中心に据えながら、営業担当、ネット担当、制作担当というように役割分担もできてきました。


海外を視野に入れた販売戦略

工房『季のくむ』のホームページ

工房『季のくむ』のホームページ

――販路は?

奥村 まだまだ立ち上げたばかりの工房なので、販路開拓はこれからといったところです。リングピローという用途を強調しながら、今はブライダルを展開するホテルなどに営業をしています。また、工房見学会やホームページなどを通じて認知拡大に努めています。
また、今はコロナ禍でなかなかできませんが、京都という立地を大いに活用して、インバウンド需要も見込めればと考えています。プライベートな観光ツアーなどを行っている通訳の方に、「季のくむ」の工房見学を観光ルートに加えていただく準備も進めています。海外の方々にお土産や贈り物として手に取っていただけたらうれしいですね。

──「こころの玉手筥」の魅力をどう伝えたいですか。

奥村 オンラインでの宣伝や販売にも取り組んでいきますが、実際に手に取っていただくこと、そして工房のメンバーと言葉を交わす機会を作っていくことが大切だと思っています。これからは、展示会や工房見学などを積極的に実施しようと計画しています。
「こころの玉手筥」は、ひとつ8万円以上する高価な商品なので、実際に手に取って、作り手の想いや素材として使っている古布ならではのやさしい色や風合いを確かめていただきたいと思っています。また、今後は気軽にご購入いただけるアイテムとして、もう少し低価格な商品も作ろうかと工房メンバーと話をしています。


世界へと発信するためのHP

――工房立ち上げと同時にHPも開設されています。狙いは?

奥村 やはり、ものづくりをして世に送り出すにあたって、目に触れていただく機会を作ることは大切です。HPには商品とともに、使い方や素材のこと、製作を手掛ける工房スタッフの紹介など、ストーリーを丁寧に掲載しています。
HPの構築にあたり、税務面でお世話になっている京都北山税理士法人の清水誠吾先生から、アイ・モバイルさんの『BESTホームぺージ』というHP作成支援サービスを紹介いただきました。このサービスでは、デザインに加えさまざまなサポートを受けられ、かつ決済機能システムも付属しているので、販売数が増えてもクレジット決済で対応できると考え、導入を決めました。幸いなことに、工房には若手スタッフもいるので、ブログなどの更新を担当してもらっています。

──SNSも活用されていますね。

奥村 海外の方にも見ていただきたいという狙いもあり、インスタグラムやフェイスブックで情報発信しています。季節感や制作の様子などHPだけでは伝えられないことを発信していけたら良いですね。HPやSNSをきっかけに、工房や今後計画している展示会に足を運んでいただく方が増えればと思っています。

この度は取材にご協力いただきまして、ありがとうございました。

奥村久美代表(手前)とスタッフ

奥村久美代表(手前)とスタッフ


季のくむ
住所:京都府京都市左京区修学院中林町6
TEL:070-8458-6608
URL:https://www.tokinokumu.com/

(インタビュー・構成/アイ・モバイル 株式会社)
株式会社TKC発行のビジネス情報誌「戦略経営者」に掲載された連載記事を掲載しております。

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