【海外ビジネスアイデア第9回】いま話題の〝ロケーションSNS〞とは

サンフランシスコにある、パンとカフェの店「ラ・ブーランジェ」に立ち寄ったときのことです。2月の半ばでしたが、天気は良く、気温は21度もあり、外の席に座ってレモンペストリーとブレックファーストティーを楽しみました。こういう時は、デジタルの世界なんてどうってことない、現実の世界が一番だな、と感じます。

ふと目を上げると、20代の若者が、スマートフォンをにらみながら店に入ってくるのが見えました。太陽の光に誘われてやってきた私とは、違うタイプです。いえ、私が他の人と違うのかもしれません。彼が使っている携帯やスマートフォンの位置情報を利用した「フォースクエア」というSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)を見てみると、このカフェには、1144人が来て4124回もチェックインしていました。このフォースクエア、たとえ私があまり使っていなくても、ある種の人に効果のある将来性の高いサービスだとすれば、自社のマーケティングに応用できないか研究する必要があるでしょう。 ロケーション(位置情報)SNSの代表であるフォースクエアは、2009年3月に始まり、ツイッターに投資したベンチャーキャピタルなどから多くの資金を得て成長、2012年3月に上場しました。急激に利用者を増やし、現在は1500万人の会員がいます。まだ利用は若い人やIT技術に詳しいグループに偏っているようですが、スマートフォンが普及するにつれ、重要性を増してきました。

近くの店に〝チェックイン〞

フォースクエアでは、近くにある店などに「チェックイン」する機能があります。なぜわざわざそんなことをするのでしょう。三つの理由があります。  

1.友だちに、今どこで何をしているかを知らせて交流できます。  

2.指定の場所にチェックインすることでウェブ上でバッジがもらえ、その   場所のメイヤー(市長)になるなどゲーム感覚の楽しみがあります。  

3.チェックインをした人や、よくチェックインする人には店から割引クー   ポンが提供されます。  

先ほどのカフェでは、メイヤーになると何を買っても25%引きです。フォースクエアの人気に驚いた他社も、相次いで似たサービスを出してきました。フェイスブックプレイスやグーグル+チェックイン、ツイッターも位置情報を利用して場所を知らせられる機能を追加しました。一歩先んじたフォースクエアは、チェックインするとツイッターやフェイスブックに自動的に投稿できるところが優れています。店や企業としては、このようなサービスを使うことで、顧客のロイヤリティーを高め、利用者の友だちの輪の中で自社をアピールできます。それも非常に安く。もうひとつ重要なのは、ネットショップは大きな投資をしないと、リアルな場所を使ってのキャンペーンができませんが、従来型の店を持つ企業はできます。これが、実際の店舗がロケーションSNSを利用する際、ネットショップより勝っている点です。

無料で宣伝してくれる!

というわけで、ロケーションSNSは、レストランや小売店にとって効果的なプログラムです。例えばあなたがメキシコ料理店を経営しており、午後5時〜6時の間にもっと集客したいとします。4人以上が6時までにチェックインをすればサングリアを1ピッチャー無料で提供しましょう。実際にチェックインすれば、フォースクエアやフェイスブックページに投稿して、無料で友だちに宣伝してくれるというわけです。ソーシャルメディアでの露出も増え、6時までに4人以上のお客も獲得できます。ハッピーアワーを設定して、他の人に無料の宣伝を提供するのもいいでしょう。  

単独の店舗だけでなく、より広い範囲でも使えます。たとえば、「ヒストリーチャンネル」という歴史に特化したテレビ番組で、2011年にロンドンキャンペーンが行われました。600の歴史的な場所の情報を提供し、フォースクエア上でヒストリーチャンネルの内容をフォローして町を歩いた人は、いろいろなバッジ(ロンドンの歴史バッジ等)をもらえ、20カ所の店舗で割引を受けられました。このキャンペーンでは20万人の新しいフォロワーが集まったそうです。

ターゲットを明確に

こういったロケーションSNSを成功させるにはどうすればいいのかを考えてみましょう。他のソーシャルマーケティングに対しての努力と似ています。  

目的を決める。もしあなたの会社について質の高いクチコミを発生させようとするなら、これは良い手段ではないでしょう。たとえば、午後3時に10代の若者に来店してほしいなどといった目的を達成するには有効です。  

ターゲットを明確にして、いろいろな仕掛けをする。無料提供だけでなく、強力で魅力的なものが良いです。若者ならステータスとしてバッジが欲しいでしょう。  

シンプルなやり方にする。  

会話する。フェイスブックについてご紹介したときにも書きましたが、ソーシャルネットワーキングのゴールはお客様と話す機会を増やすことです。  

会社のスタッフに、どのように対応するか教育する。利用促進をするのはいいが、スタッフがメイヤーになろうとするのはダメです。

チラシやポスター、フェイスブックやホームページでも宣伝する。どうやってロイヤリティープログラムと結び付けるか考える。  

結果を追跡する。マーケティングは常に、効果測定をしないとその価値は限られてしまいます。先にメリットは何かなどを決めておきましょう。  

長期的なプログラムとして考える。始める前に、継続できるエネルギーがあるかどうか確かめておきましょう。  

どこにでも持っていけるパソコンやスマートフォンの普及により、ロケーションSNSは避けられないものになってきました。どんなお客様にも向くサービスというものでもなく、私に合っているとも思えませんが、新たなツールになりそうです。ITに詳しいマーケッターは、今後活用していくでしょうから、あなたも顧客に向けて活用できないか考えてみてはどうでしょうか。  

この記事への感想や疑問、今後興味のあることなどがありましたら、ぜひお知らせください。  

【翻訳】アイ・モバイル株式会社 マーケティングPRプロデューサー 西山裕子

オリバー・C・チャブ
アイ・モバイル株式会社 取締役
 

アメリカニューヨーク州生まれ。スタンフォード大学MBA取得。
日商岩井で東京都都市開発プロジェクトを行い、日本の環境庁で政策提案を行うなど、日本で幅広い経験を持つ。
数々の会社を立ち上げ、アメリカのパートナーにアドバイスを提供する。サンフランシスコ在住。

last update:4月3日

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