【海外ビジネスアイデア第3回】共同購入サービスをめぐる中小企業の明暗

先月のこと、「ドリューズ ブラザーズ」(※)という近所の高級肉屋が、グルーポンで共同購入特典を出していました。グルーポンは、毎日私に、サンフランシスコ付近で提供される共同購入についての情報をメールで送ってきます。2日以内にクレジットカードでグルーポンに7ドル払えば、ドリューズで15ドル分の肉を買う権利が得られるというのです。  

こういったサイトでは、会員が大幅な割引で購入する権を前払いで買います。ドリューズに行くと、いつも最低20ドルは使うので、私はすぐにグルーポンにアクセスしました。  

通常、共同購入が実施されるためには、最低人数が設定され、友だちに情報を知らせて一緒に買おうと言う気にさせます。残念ながら、ドリューズはとても人気があり、私がサイトに行った時にはすでに2000人の上限申込に達し、売り切れていました。買う事ができたなら、6カ月間使えたというのに。

※「Drewes Bros. Meats」は現在は閉店しています。

利益を出す難しさ

ドリューズも、新規顧客を何とか得ようとしているのでしょう。共同購入は前払いなので初めにお金が入るというものの、私のように既存顧客もいるでしょうし、特典の額より多く買ってもらって、初めて利益が出るという難しさもあります。グルーポンの例で言うと、顧客が15ドルしか買わないなら、ドリューズは4ドルの赤字で、23ドル以上店で使ってくれて初めて利益が出ると推定されます。共同購入を申し込んだ人は、全員が店に行くとは限りません。期限以内に購入しなければ無効です。モノにもよりますが、実際に購入する率は80〜90%と聞きました。使われなかった分は利益となります。ドリューズは2000人の顧客を集めましたが、新規顧客がいて、損益分岐となる23ドルより多く店で買ってくれる客がいて、有効期限を超す客がいればようやく黒字となりますが、さてどうなるのでしょうか。

消費者の感情に訴える

アメリカではどこの地域でも、共同購入が提供されています。昔からある新聞ちらしのクーポンとは異なり、オンラインの共同購入は前もって購入が必要となるので、いわば商品券のようなものです。さらに1日限定販売などを組み合わせることで、クリスマス直後のセールのように、消費者の感情に訴えて盛り上げます。

サンフランシスコは、こういった活動がもっとも盛んな街の一つでしょう。少なくとも56の会社が、毎日共同購入を提供しています。 歯医者の診療から、ネイルサービス、ゴルフレッスン、船旅まで様々です。また数え切れないほどの会社が、共同購入の情報をまとめて発信しています。「イエピット」というサービスは、グルーポンを含むアメリカ中の655社の共同購入を紹介しています。一番大きなサイトは、「グルーポン」「リビングソーシャル(アマゾンの子会社)」ですが、「ギルト」という高級品を扱うサイト、「ママソース」 という母と子ども用品に特化したサイト、コンサートや美術館のイベント専門の「ゴールドスター」など特化型のものもあります。これらのサービスは、中小企業が使っていた旧来の広告宣伝に置き換わりつつあります。  

典型的なグルーポンの会員は、裕福な女性(会員の66%)で30代。教育レベルも収入も平均より高いそうです。アメリカではインターネット利用者の大卒の割合は25%ですが、グルーポン会員は33%、リビングソーシャルは49%に達します。安売りを探し回ると言うより、裕福な郊外の住人が、お得な情報を求めているという感じです。共同購入は、大きなビジネスになっています。2011年の4月〜7月まで、アメリカのトップ30のサイトで、5億2800万ドルもの売上があったそうです。共同購入が今後どのようになっていくかわかりませんが、アメリカの中小企業の広告のやり方を変えてしまったということは言えます。日本でも共同購入は拡大していくでしょうから、アメリカの中小企業が学んだことを知っておかれると良いでしょう。共同購入サービスに出店した企業のおおよそ半分は継続して利用し、半分はもう使いません。明確に経済効果が予測できないようなら、営業マンがなんと言おうとやらないこと、利用する際も条件をよく交渉することです。

グルーポンの失敗例と成功例

先月、サンフランシスコの小さな地元企業が廃業しました。「マッサージ&ウェルネススパ」のオーナーは、グルーポンで50%割引を出したのですが、二つの大きなミスを犯しました。  

1.オーナーは、彼自身のコストをよくわかっていませんでした。店頭価格の50%割引を提供し、その50%をグルーポンに払ってし   まうと、残り25%だけが売上で、マッサージの人件費やシーツ代などが補えなくなってしまったのです。他の追加サービスや高価   格製品も用意しておらず、マッサージのたびに赤字に。また昔の客も共同購入で安くサービスを受けるようになってしまいまし    た。  

2.オーナーは申込の数をうまく予測できず、多くの客が予約待ちとなりました。このせいでたくさんの否定的なコメントがクチコミ   サイトに掲載されてしまい、それまでは地域で1位か2位の腕と評価されていたのに16位に落ち、売上も減少。この小さな会社は、  コストも得意客の売上減も吸収できず、閉店してしまいました。それと比べると、うまくいったのは、「エディーじいちゃんのリ   ブとバーベーキュー」です。20ドル分の食材が買える共同購入権を、10ドルで1184人に販売しまたが、そのうち800人は、  新規顧客でした。オーナーは顧客をPOSデータで追跡し、共同購入の設定額20ドルより平均で12ドル多く払うことをつかみま   した。つまり、店頭で32ドル分の商品が売れ、全体の予測売上は17ドル(グルーポンでの売上は5ドル+店頭12ドル)となり、   損益分岐点を超えて利益も出たというわけです。さらに新規顧客のうち50%が、店にまた来て定価でも買ってくれました。この店   は十分大きく、客が押し寄せても対応することができました。オーナーは、その後も2000人を対象に、また共同購入を提供し   ました。  

経営者の皆様も、共同購入の会社から営業をかけられる日が来るかもれません。鍵となるのは、割引によってマーケティング費用より多くの金を失わないようにすること、たくさんの顧客が来ることでどのような影響があるのか理解すること、割引で来た顧客を長期的な顧客にかえることでしょう  

 共同購入サイトをご利用の際は、ぜひ次のチェックリストをご参照ください。

ご感想や疑問、今後興味のあることなどがありましたら、ぜひお知らせください。 お待ちしております。  

【翻訳】アイ・モバイル株式会社 マーケティングPRプロデューサー 西山裕子

オリバー・C・チャブ
アイ・モバイル株式会社 取締役
 

アメリカニューヨーク州生まれ。スタンフォード大学MBA取得。
日商岩井で東京都都市開発プロジェクトを行い、日本の環境庁で政策提案を行うなど、日本で幅広い経験を持つ。
数々の会社を立ち上げ、アメリカのパートナーにアドバイスを提供する。サンフランシスコ在住。

last update:10月3日

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