【海外ビジネスアイデア第1回】クラウドファンディングで新事業を

私は中小企業にITマーケティングサービスを提供するアイ・モバイル社で、取締役として様々な事業に関わっています。アメリカのシリコンバレーに駐在し、多くの投資家や起業家たちと交流しています。今後、海外の新しいサービスや事例などをご紹介していきますが、読者のみなさんの刺激となり、ビジネスアイデアのヒントとなればうれしく思います。

 失敗はチャンス

5年ほど前のことです。私の事務所のビルの2つほど南に、オデオというポッドキャストの基盤システムを提供する、設立間もない会社がありました。たまたまスタンフォードの友人がその会社の顧問をしていたので話を聞いてはいたのですが、特に関心はありませんでした。そこの社員がよく犬を散歩させていたので、頭をなでてやった思い出があるくらいです。AppleがiTunesストアに独自のポッドキャストを搭載した後、オデオはビジネスを失ってしまいました。時間ができた創業者は、ちょっとしたサービスを作りました。  

名前は「ツィッター」。  

そう、グーグルが100億円で買収しようとしたサービスです。創業者のビズ・ストーン氏によると*、「ツィッターは主力事業の片手間にやっていたものだった。ポッドキャストの失敗があったから、うまくいったんだ」とのことです。オデオは失敗しても何かを創るのを止めず、ツィッターを生み出すことができました。失敗はいつでも起こり得ますが、成功に導くための課程として生かしていくことが重要でしょう。オデオのように失敗しても、もう一度立ち上がることを許す、それがシリコンバレーの文化です。  

有名なバスケットボールの選手、マイケル・ジョーダンも言っています。「僕は9000以上のシュートを失敗し、300試合負けた。人生で、何度も、何度も、何度も失敗してきた。だから、成功したのだ。」100%成功する人などいません。挑戦には失敗がつきものです。勝つためには、挑戦しなければなりません。彼のように最高クラスの選手でも、挑戦して、失敗して勝利が生まれるのです

再挑戦可能なら早く失敗を

もちろん、業界によっても事情は異なります。大がかりな投資が必要な工場なら、失敗する余裕はないかもしれません。しかし、ITマーケティングに関わるようなものはアイデアを試すのに費用があまりかかりません。メールキャンペーンやソーシャルメディア、ブログやツィッターの活用などは低価格で始められます。  

効果がなければすぐに止めればいいのです。ただし、ITマーケティングも、魔法の杖ではありません。ブログを書くならおもしろくなければならないし、クーポンを出すならお客さんにとって価値あるものでなくてはなりません。お試しであっても、今後続ける価値があるかはしっかり計測できるようにする必要があります。シリコンバレーでは、失敗してもおとがめはない印象があるようですが、それは間違い。失敗すれば企業はつぶれ、社員は仕事を失います。結果は常に求められ、ダメなアイデアはつぶされる。ただしここでは、失敗は挑戦の一つであるとみなされるのです。私の友人は、創業まもないある技術系企業に勤めていたのですが、その会社は1年で廃業してしまいました。  

しかし、投資していたベンチャーキャピタルが彼女を評価し雇ったのです。10年後、彼女はシリコンバレーの中でもトップ100の投資家になりました。なぜ皆が、新しいことへの失敗を恐れるかと言うと、経済的・社会的な費用がかかるからでしょう。しかしシリコンバレーでは、挑戦して失敗することの費用を抑える文化があります。会社がなくなって、仕事を失ったとしても、それほどひどいこととは思われません。また何か違う事を始められます。過去にした失敗の経験は貴重なものとして尊敬され、新しい仕事につけます。あなたの価値を少し上げるのです。失敗しても、人やお金を迅速に新しい試みに割り振る仕組みができているのです。

起業支援の新しい仕組み

最近話題の「クラウドファンディング」をご存じでしょうか。ネットワーク上でソフトを動かす、Cloud(雲)サービスではなく、Crowd(群衆)です。「みんなで投資」です。特に芸術作品や発明、社会貢献的なもので多くの人から資金を集めて、社会的・経済的な負担を少なくすることを目指しています。「見返りを求めない寄付型」、「イベントやグッズ購入型」が主で、「金銭的リターンを求める投資型」も少しあります。

Kickstarterというサービスでは、いろいろなプロジェクトが支援を募っています。ヘックスブライトというLED懐中電灯は、製造開始に最低3万1000ドルを必要としていましたが、2000人近くの支援者から15万ドル以上の資金を得ることができました。ジュリア・ヌーンズという若手歌手は、アルバムを作るために支援を求め千人から5万ドル以上(目標1万5000ドル)の資金を集めました。  

いつまでにいくらが必要かという目標を設定してうまくいけば起業家はリスクを抑えてプロジェクトを開始できます。クラウドファンディングは、お金を簡単に集める方法として注目されていますが、友人や支援者、潜在顧客へのマーケティングは欠かせません。独立系映画の配給サービス創業者キエナン・マスタートンは、その苦労を語っています。「四週間ツィッターでつぶやき、ブログを書き、質問に答え、取材を受けた。正直、できることは何でもやって、目標を超える1万2千ドルの資金を得たんだ。」**クラウドファンディングの別のモデル、Profunder.comでは、起業家が必要な投資を集めるときに、将来の売り上げを分け合うサービスを提供しています。Growvc.comは香港に拠点を置き、起業に特化した会員制のSNSを運営して、起業家と投資家のマッチングを行っています。  

日本ではゲーム会社が似たようなことをしています。そのうち、もっとおもしろい、サービスが出てくるでしょう。シリコンバレーで起こったことは、形を変えつつ、他の国でも広がっていくものです。  

この記事への感想や、今後興味のあることなど、ぜひお知らせください。シリコンバレーの革新の嵐の中で多くのものを見ているので、何かお役に立つことが言えるかもしれません。  

【翻訳】アイ・モバイル株式会社 マーケティングPRプロデューサー 西山裕子

オリバー・C・チャブ
アイ・モバイル株式会社 取締役
 

アメリカニューヨーク州生まれ。スタンフォード大学MBA取得。
日商岩井で東京都都市開発プロジェクトを行い、日本の環境庁で政策提案を行うなど、日本で幅広い経験を持つ。
数々の会社を立ち上げ、アメリカのパートナーにアドバイスを提供する。サンフランシスコ在住。

last update:8月8日

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