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 INTERv i ew 「消費者と同じ方向を向く」

Pc-Webzine NO.236号 2011年10月号にITマーケティング所長古屋亮太のインタビュー記事が掲載されました。  

「ソーシャルメディアが企業のマーケティングの在り方を根本から変えていく」。アイ・モバイル株式会社 IT マーケティング研究所所長の古屋亮太氏は、これからの企業マーケティングについて、このような見解を示した。SNS やスマートフォンは社会や消費者にどのような変化を与えるのか。それによって企業のマーケティング活動はどのような影響を受けるのか。古屋氏に伺った。

 商品の価値判断者が企業から消費者に移行

マーケティングに利用されているスマートフォンの魅力はどこにあるのでしょうか。  

古屋  

「スマートフォンの特長は、GPS を搭載していることや操作が簡単になっていること、画面が大きくなったこと、プラットフォームの共通化によって開発コストが低下してきたことなどが挙げられます。現在は、新しい移動体としてパーソナル情報端末の役割を担うようになってきました。旅行などに出かけた場合に、現地において手元で情報を取得できるようになり、非常に便利になっていますね。  

こうした中、重要になってきたのが、今、自分が欲しい情報にどれだけダイレクトにアクセスできるかどうかという視点になります。もちろん、メディアごとに情報が異なっており、その間には垣根があるわけですが、現在では、その垣根を越えるような仕組みの構築がユーザーニーズとして挙がってきています。  

情報がメディアの垣根を越えて縦横無尽にネットワーク上を行き交うようになると、無秩序に情報が散在することにもなり、ある程度の交通整理が欠かせません。その問題を解決するために、ある特定の場所において利害関係を持つエリアという視点で情報を統合し直す必要が出てきます。そうするとスマートフォンに搭載されているGPS が非常に重要な役割を担ってくるわけです。  

マーケティング的に考えた場合、こうたエリアをうまく使ったマーケティングがすごく重要になりますね。特定のエリアにいる消費者に対してピンポイントで訴求していくマーケティング手法です。

SNS が利用されているマーケティング市場ではどのような変化が起こっているのでしょうか。  

古屋

価値判断者が企業から消費者に移行しつつあります。従来のメディアはマスメディアと呼ばれるもので情報の発信者は企業であり、情報の流れは一方通行でした。それに対して、少し前から新たなメディアがインターネット上で登場しています。掲示板とかブログなどのパーソナルメディアですね。こちらは消費者がお互いのために情報を共有する場であって、企業は蚊帳の外でした。情報発信者は消費者であり、受信者も消費者。企業と消費者の情報の流通はない状態でした。  

SNS などのソーシャルメディアは、受信者と発信者が相互に入れ替わっていき、誰もが情報の発信者になれることが大きな特長です。そのため、企業にとっては全く新たなマーケティング手法が必要になってくるのです。もちろん情報のコントロールが効かなくなるので危険もあります。  

シェアされる情報を受け取るのは企業を含むユーザーであり、ユーザーが生み出した評価指標そのものが、企業の商品の評価になっていきます。そのため、コマーシャルなどで特長をアピールしたとしても、違う視点で評価する人たちがユーザーの中に多ければ、その訴求は意味がなくなってしまうのです。これが、価値判断者が企業から消費者に移行しているという実態です。ソーシャルメディアはこれまでのマーケティング手法にとてつもなく巨大な変化を起こそうとしているのです。

 マーケティング変革の際に企業が意識すべき7つのこと

マーケティング手法が変わるということですが、企業はその変化にどのように対応していけばいいのでしょうか。  

古屋  

これから企業は七つのことを意識していく必要があるでしょう。一つ目は、社会と消費者から必要とされるような価値を提供できる企業になるということです。今までの商品の提供形態は、顧客が喜びそうなものを開発して提供するという企業側の論理で考えられたものでした。しかし、これからは、顧客ではない消費者や社会が企業を判断する時代になっていきます。社会的な存在価値がない企業は淘汰されていく運命にあるのです。  

二つ目は、価値を提供できてはじめて、顧客満足の考えが必要になるということです。ソーシャルメディアが登場したときに、これからますます顧客満足が重要になると言われましたが、まずその前に、社会的な存在としての価値を備えなければなりません。  

三つ目は、顧客とソーシャルメディアを利用して相互作用していく必要があります。顧客と相対した立ち位置ではなく、顧客と同じ方向を向いて相互のやり取りをしていかなければならないのです。  

四つ目は、顧客との相互作用の中で、さりげなくマーケティングをしていくことです。それは、ニーズの調査や販売のアピールなどです。こ れまでのプッシュとプルというマーケティングの考え方と異なり、顧客との共感をベースにした商品開発が、さりげなさにつながっていきます。  

五つ目は、商品開発や企画、営業などのすべての企業プロセスが相互作用という行為と接点を持たなければならないということです。日々の営業プロセスがマーケティングプロセスと融合する必要があるのですね。  

六つ目は、それに基づいて顧客のニーズをサービスや商品に反映させていくことです。ますますスピードアップが要求されていくでしょう。  

そして最後に、それらがさりげなく、タイミングよく行われなければなりません。顧客にとっての時宜があり、顧客にとっての文脈があり、そのときに何がしたいという状況があるわけで、そうしたタイミングに応じて商品やサービスを提供できる仕組みを構築していかなければなりません。

 社会的な意義が明確になればSNSマーケティングもうまくいく

マーケティングの手法を変えるだけで、ソーシャルメディアによる変化に対応できるものでしょうか。  

企業の内部も変える必要があります。今までは、企業内の各部署がバラバラの縦割りでしたが、これからはそうした縦割りの企業では対応できなくなっていくでしょう。営業は常にマーケティングプロセスの中で営業を行い、開発は現場で顧客の話に耳を傾けていくようなことを本当にやっていかなければならなくなるからです。  

ソーシャルメディアは今までに存在しなかった事象であり、情報や意見、考え方が誰彼ともなく共有されることになった社会に対して、企業は襟を正して向き合っていく必要があるでしょう。ただし、ソーシャルメディアが形作る世界においては、社会的な存在として要望されるのは、企業だけではなく、消費者も同じです。企業も消費者も、その社会において必要とされれば生き残れるでしょうし、必要とされなければ排除されてしまうでしょう。  

今、大企業は試行錯誤しながらノウハウをためていますね。その過程において、やはり社会的存在であることが求められていきますから、自社の存在って何だろうという疑問が出てくるでしょう。その疑問と向き合い、企業としての社会的な意義を明確にできれば、それ以降に行われるソーシャルメディアを使ったマーケティングはどんどんプラスに働いていくのではないでしょうか。中小企業においても、マーケティングの仕組みが大きく変わる今はチャンスです。大企業がカバーできない末端ユーザーへのリーチを強化していけば、生き残ることは可能です。自ずと大企業との協力関係も作られていくでしょう。

古屋 亮太(ふるや りょうた)
アイ・モバイル株式会社 社長室 

早稲田大学卒業。ピッツバーグ大学公共政策・国際関係大学院修士。外務省系の財団に勤務後、ネットマーケティング企業(現:楽天リサーチ)の立ち上げに参画。以降、日本ユニシスなど複数の企業において経営戦略・新規事業開発などに従事、多くの戦略策定やネットマーケティングツールの開発を行う。

last update:10月13日

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