実践編 第8回 新規顧客とのコミュニケーション

 爆発するSNSの流れ

1月より日本でも公開された、「ソーシャルネットワーク」の映画をご覧になった読者も多おられるだろう。今、6億人ともいわれるユーザーを持つソーシャルネットワーキングサービス(SNS)、Facebook(フェイスブック)創業者の熱い物語だ。一つの若者のアイデアで、簡単にインパクトのある新しいコミュニケーションツールが生まれる。驚くべきことだ。これからも、もっとすごいものが生まれるかもしれない。経営者として、このような最新の情報に敏感になり、顧客や取引先に最適なコミュニケーションができるようにしていきたいものだ。

Facebookをはじめとする、各種のSNSは、仲間と情報を分かち合いたい、コミュニケーションをしたいという目的で使われ発展してきた。従来のマス広告とは異なる、仲間のクチコミを中心としたSNSの影響力はますます大きくなってきている。実際、アメリカでもっとも訪問者が多いトップ10のサイトを見ると、2009年は検索サイトのグーグルであったが、2010年はFacebookがトップとなった。人々は、インターネットの世界において情報を検索するよりも、特定の目的をもった集りの中で過ごすことの方が多くなっているのだ。

この流れは、中小企業にとって有利に働くこともある。安価でスピード感のある新しい手法で顧客とコミュニケーションできる可能性を秘めているからだ。今月と来月号では、顧客へのコミュニケーションがこれまでどのように進化してきたか、時代の変化に合わせて効果的に自社のサービスを知ってもらうにはどうすればよいかを考えていきたい。今月は、新規顧客へのコミュニケーションについてである。

 マーケティング3.0とは

近代マーケティングの父ともいわれる、フィリップ・コトラー氏が「マーケティング3.0」といコンセプトを紹介している。モノがなかったころ、企業は製品志向であり、作ったモノを幅広く宣伝することが重要であった(マーケティング一1.0)。モノが増えて選択の幅が広がると、ターゲットを決めてその声を聞き、ニーズに合う商品を作る顧客志向が必要となった(マーケティング2.0)。

そして今、地球規模で情報が広がる世界においては、企業は消費者の声を聞くだけなく、消費者を含めた自社をとりまくすべて(パートナー、地元企業、さらには地球環境まで)を考慮して、世の中に受け入れられる製品やサービスを提供し、一緒に育てていく必要がある(マーケティング3.0)。弊社でも、企業向けホームページサービスを提供しているが、自社の開発部門だけでつくってもダメで、世の中にまず出し、マスコミの反応、販売代理店の依頼、顧客の声、仕入業者の要望などを聞きながら改善をしていく。日本全国あらゆる業種の顧客に対応していると、あっと驚く観点で要望をいただくこともあり、それが弊社のサービスを育てている。昔から顧客の声を聞くことの重要性はわかってはいたが、ツィターやブログ、ソーシャルネットワークサービスでは瞬時にして評判や批判が伝わるので、より早い改善が求められており、気が抜けない。

 新規顧客の開拓のために

では、そのような流れの中で、中小企業が自社の製品サービスを知らせて、新規に顧客を得るためにはどうすればよいか。最近のITサービスで、安価で手軽な例を4つご紹介しよう。

1.プレスリリース
新サービスが出れば、マスコミに向けてプレスリリースをすることをお勧めする。弊社でも、よくプレスリリースをするが、一回出すと新聞や雑誌二〜三社には取り上げてもらえる。日経新聞に大きく紹介されて、大手企業から提携の申し込みを受けたこともある。ネットの配信システムを使えば、5万円程度で主要なマスコミ媒体に送ってくれる。ニュースサイトで紹介されてリンクがはられると、効果的な検索エンジン対策にもなる。

2.クーポン
クーポンは、新しい顧客の獲得につながる可能性が高い。以前も紹介したグルーポンは、共同購入のクーポンサービスだがユーザー数をどんどん増やしている。ただ、クーポンで注意したいのは、顧客を継続させることだ。私の知っている飲食チェーンも、赤字覚悟でグルーポンに破格値のメニューを出したところ、その日は大にぎわいだったが、客がほとんど継続して来なかった。この連載の第6回「高価格をどう維持するか」でも触れたが、安売りには理由が必要であり、その後の継続も見据えた計画を準備すべきだ。

3.ダイレクトEメール
Eメールを使ったコミュニケーションも、比較的安価に顧客獲得をするのに役立つ。弊社のパートナーで、インターネットに関わる資格試験を実施運営している団体がある。先日、この団体が試験に関する案内を、その資格にかかわる仕事をしている人たちにメールで送ったところ、案内したサイトへの訪問率は五%で、そのうちの一〇%がテキスト購入や受検をしたそうだ。一方、懸賞サイトの会員で「資格取得に興味がある」と登録している人たちに送ったところ、訪問率は一%、購入率はそのうち二%にすぎなかった。いかにターゲットとなる人をできるだけ絞り込んで、コミュニケーションをすることが重要かがわかる。

4.SNS
まだ日本では導入企業は多くはないが、Facebookでファンページを作る企業がアメリカをはじめ各国で増えており、スターバックスなどはファンの数が一九〇〇万人もいる。世界各国のスターバックスでの体験をファンが語り、写真を投稿している。町の小さなお店でもファンページを開いて、新メニューで店にお客を呼び込む手段としているところもある。SNSに広告を出すのもよいだろう。Facebookは会員の属性にそって、細かくターゲットを絞り、広告費用の上限を設定して広告内容を変えながら様子を見ることができる。2011年のFacebookの広告収入は前年度118%アップの40億5000万ドル(**)だとか。今後、日本でもSNSへの広告は増えていくだろう。

 効果を出す施策の設計

これまで紹介したようないくつかの例を試す際、コミュニケーションが効果的だったか検証し、PDCAサイクルを回していこう。重要なのは、数値目標をたて、何がその数値に結び付くのか、仮説と検証を繰り返していくことだ。押さえたいポイントは以下の通りである。  

  1. 目的:新サービスの新規顧客を○○人集めたいなど、数値目標を具体的に設定する。  
  2. ターゲット:情報を送る顧客層を細かく設定し、できるだけニーズに近い人たちに訴える。  
  3. 検証:目的を達成するための手段や方法を数通り考えてみて、費用対効果の検証を行う。  
  4. さらに改善:実行して結果を見ながら強化し、さらに広げていく。何はともあれ、やってみることだ。どんな方法であれ、試してみて顧客に熱い思いを伝えれば、さまざまな反応や結果が帰ってくる。顧客や市場が、あなたを育ててくれるだろう。

[ 戦略経営者(株式会社TKC発行) 2011年3月号記事 ]
執筆:アイ・モバイル株式会社 代表取締役 デービット・リーブレック
【プロフィール】
アメリカ、オレゴン州生まれ。
ジョージタウン大学でMBA取得。 大学時代には交換留学生として、早稲田大学ビジネススクールで学ぶ。東京銀行ロンドン支店P&G勤務後、コンサルティングのBooz Allen & Hamilton社(東京及びサンフランシスコ)のマネージャーを経て独立。
2000年にアイ・モバイル株式会社を創業。

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