実践編 第7回 マーケティングチャネルを生かす

ほとんどの企業は、つくったものをそのまま顧客に直接販売することはなく、代理店や仲介業者といったチャネルと一緒にビジネスを進めていく。特に中小企業にとっては、自社ですべてを行うのではなく、それぞれの分野の専門企業と連携していくことが重要だ。チャネルの選択とそれをどう組み合わせていくかは、ビジネスの成長に大きく影響するので、どう設計するかは経営者のもっとも重要な仕事の一つだ。また、一度決めて終わりではなく、時代によって、顧客のニーズによって、最適なものに変化し続けなければならない。

 3つのマーケティングチャネル

マーケティングチャネルという言葉を、お聞きになったことがあるだろうか。企業が製品やサービスを顧客に提供するために使うもので、主に3つで構成される。

1.コミュニケーションチャネル
顧客に自社の製品やサービスを知ってもらい、購買に結びつけるため情報の発信や受信をするものだ。従来からあるテレビや雑誌などの広告に加え、最近は双方向でのコミュニケーションを伴うホームページやブログなどが重要になっている。広告代理店は、コミュニケーションを伝えるためのチャネルとなる。

2.流通チャネル
購買者や利用者に商品やサービスを見せ、届けるものだ。卸売業者・輸送機関・小売業者・物流サービス会社などがこれを担う。

3.販売チャネル
新しい取引を開拓し、新規顧客を得るときに活用するチャネルである。流通業者や小売業者も販売チャネルであるが、新しい取引先開拓の情報提供・紹介・推奨などをしてくれる人や組織も含まれる

 効果的なチャネル戦略を模索

もともと日本は、入り組んだ流通組織やさまざまな仲介業者が存在することで有名である。私もアメリカと比べて、その複雑さに驚くことがある。また、貿易国である日本は、商社を通じた取引が多い。ラーメンからロケットまで幅広い商品・サービスを取り扱う「総合商社は、日本特有の形態である。アメリカにも専門商社はあるが、日本のような総合商社は存在しない。しかし外国との取引に関しても、直接行う企業や、インターネットを使ったバーチャル商社である楽天やアリババなどの台頭がみられる。実際、1980年代は日本の輸入総額の約65%、輸出総額の50%を総合商社九社が占めたが、2007年には輸入の35%、輸出の20%となっている。生鮮食料品を扱う卸市場も、生産者が市場外流通を増やして直接販売する傾向が増え、中央市場は75(10年前は87)、地方市場は約1200(10年前は約1450)と、減少傾向である。他の業界でも、業界再編や統合化が進む卸は多い。全体としては、チャネルの数や取扱量は減少して直接取引が増えていく傾向にある。

企業向けホームページ作成や運営を提供する弊社は、2000年の創業以来さまざまなチャネルを活用し、いろいろな方に支えられてビジネスを広げてきた。まだ企業のホームページが一般的でなかった時代から、その必要性や将来性を理解して、サービス内容を伝え顧客を紹介してくれた税理士事務所、事務機器販売会社、医薬品卸などとともに、顧客を広げていった。一方、チャネルとの連携を強めながらも、製品によっては自社で直接販売するほうが効果的なものもあり、2006年からはダイレクト販売部門を作った。これからも、継続的に効果的なチャネル戦略やその組み合わせを考えていく予定である。

 常に見直し、変化する

業績がいい会社はチャネルを常に見直して、どんどん変化をしている。取引先の大手消費財メーカーは、卸を通じて小売店で販売する商品とは別に、最近化粧品や健康食品のダイレクト販売を始めた。新聞広告やインターネットを使い、一人のユーザーをつかむのに1万円かけて5万円以上の年間売り上げを得ているという。その新聞広告を制作するのは、今までのテレビの広告代理店とは違う、通販に独自のノウハウを持っているところだという。言葉や写真の使い方など、まったく違うコミュニケーションが必要だとのことだ。  

しかし、すべての会社が直接輸入や販売をするノウハウや資金を持っているわけでない。分野によっては直接行うよりもチャネルを使うほうが効果的な場合もある。 今日、成功している企業はチャネルの活用の仕方を市場や顧客のニーズに合わせてうまく組み合わせている。

大手パソコンメーカーのヒューレットパッカードは、代理店施策に長けている企業として有名である。同社は、製品を販売する代理店を一次代理店・二次代理店と分けて人・物・金などのリソースを提供しながら強力な関係つくりを築く仕組みを持っている。単に製品を売る代理店という位置づけでなく、パートナーとして情報提供を密に行い、ウィンウィンの関係を築くようにしている。一方、通販事業もあって一般消費者に直接販売する製品群も持ち、安価な商品のニーズにもこたえている。

 現場メンバーの声をきく

チャネルを決めて一緒に仕事をしていく場合、大切なのはその声を聞くということだ。経営者だけでなく、実際に動く現場のメンバーの声である。過去にわが社のホームページの販売契約を代理店と締結した時、経営層は顧客に付加価値を提供する良い戦略商品とし てやる気があったが、現場の営業マンはインターネットに不慣れで積極的に紹介しないという事があった。期待通りに販売が進まない状況を見て、北海道から沖縄まで支店をめぐり、継続的な勉強会、事例紹介、簡単に使える営業ツールの提供など、現場が動きやすい仕組みを提供するよう努めたものだ。

さて、あなたの会社が取引しているチャネルは、最適な選択だろうか。時代の流れに、顧客のニーズに合っているだろうか?また、そのチャネルを最大活用するために、あなたの会社はチャネルのメンバーの声を聞いているだろうか?広告チャネル、流通チャネル、販売チャネルそれぞれを折に触れ見直してみよう。特に次のものがうまく流れているかを基準にして判断をしてみよう。

  1. 製品やサービスの流れ 
  2. 情報の流れ 
  3. お金の流れ

これらそれぞれがうまく流れているか、より価値を高める方法はないかなど、自社のビジネスをさらに伸ばす道がないか見直していくとよいだろう。

[ 戦略経営者(株式会社TKC発行) 2011年2月号記事 ]
執筆:アイ・モバイル株式会社 代表取締役 デービット・リーブレック
【プロフィール】
アメリカ、オレゴン州生まれ。
ジョージタウン大学でMBA取得。 大学時代には交換留学生として、早稲田大学ビジネススクールで学ぶ。東京銀行ロンドン支店P&G勤務後、コンサルティングのBooz Allen & Hamilton社(東京及びサンフランシスコ)のマネージャーを経て独立。
2000年にアイ・モバイル株式会社を創業。

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