実践編 第4回 競合と差別化し、売上に繋げる

 Apple との出会い

今年5月、アメリカのカリフォルニア州シリコンバレー地域にある大手IT企業を何社か訪れる機会があった。グーグル、オラクル、Appleなど、IT業界をけん引している会社の幹部と会い、非常に刺激を受けた。Appleとは、何度かの話し合いの末、「中小企業を元気に」という弊社のビジョンに共感していただくことができた。  

9月からは、Appleが認定する正規販売代理店として、タブレット型多機能端末〝iPad.(アイパッド)を、税理士事務所や中小企業が活用できるようサポート・提供していく予定である。

 iPhone の躍進

このAppleの主力商品である携帯電話のiPhone(アイフォーン)は、すでに全世界で5000万台以上が販売されている。何がヒットの理由だろうか。携帯用音楽機器のiPod(アイポッド)でつちかったノウハウの活用や、様々な企業が簡単にソフトを開発提供できる仕組みなど、いろいろな要因があるが、その成り立ちとポジショニングについても注目したい。

2000年に私が会社を始めたころ、日本は世界一、携帯電話の機能やサービスが進んでいる国であった。着メロや待ち受け画面、携帯ゲームの発達など目を見張るものがあり、わが社も携帯電話の活用を目指して、社名に「モバイル」の言葉を入れることにした。日本での携帯電話の発展は、ビジネスよりも一般消費者向けのサービスが主体であった。一方、アメリカでの携帯電話は、ビジネスでの利用を重視して発展してきた傾向がある。1997年にカナダのリサーチ・イン・モーション社が開発したブラックベリーという携帯端末は欧米のビジネスマンを中心に広く利用されている。オバマ大統領も、常に外出先でそれを使ってメールを確認する様子が話題になった。

iPhoneも、携帯電話としてよりも、パソコンが携帯になった「スマートフォン」というポジショニングであり、パソコンとの連動が優れている。たとえば、メールソフトのアウトルックや、インターネットブラウザーの「お気に入り」がiPhoneとパソコンで同じ状態で使える。私も使い始めると、パソコンをゆっくり広げるのが難しい場所や時間(これが意外と多い)にメールをほとんどチェックできるので、非常に効率が上がった。  

このように、高度に発展した携帯電話市場を持つ日本において、iPhoneが成功することができた要因の一つは、既存の日本の携帯電話とは異なる価値を提供したからである。

また、Appleは昔から、デザイン性に優れおしゃれな機器を作る会社としてのイメージを保っている。自社のブランドの扱い方にも慎重で、他の携帯電話と違ったポジショニングを確立している。

 ポジショニングとは

Appleは大企業の例とはいえ、競争の激しい現代において成功するには、どのような中小企業もユニークなポジションを獲得することが重要である。自社の製品やサービスが競合と似ていたら、勝つことは難しい。また、今は顧客に支持されているとしても、永続的にそのポジショニングを保つことができるのか、常に確認しなければ生き残ることはできない。

そもそも「ポジショニング」という語は、1980年代にアメリカのマーケティング戦略家アル・ライズとジャック・トラウトによって一般に広められた。彼らは、「ポジショニングは製品に対して行うものではない。見込客のマインドに対して行うものである」と言っている。

ここでも、顧客視点に立つことの重要性がわかる。経営者は、顧客の声を聞きながら、自社の製品やサービスは市場のどこをターゲットにするのか、またその市場はどの程度の利用者や拡大性があり、潜在的な売上が見込めるのかを、しっかり把握する必要がある。そして、それを使うべき人の心の中で、他社とはどのように異なるイメージを持ってほしいかを考えて、差別化する。  

不況の中でも元気がある商品やサービスは、総じて価値が明確であり、独自のポジションを持っているのである。

 ホームページを作るつもりで

わが社は、ホームページ制作・運営を主力サービスとして提供しているので、ホームページを作る際に経営者にいろいろなヒアリングをするが、そのときあらためて自社や自社商品のポジションについて考えをめぐらす方も多い。ポジショニングを明らかにする実践例として、経営幹部社員も含めてワークショップを行ってみよう。

【ステップ1】
自社の商品のホームページを新たに作ると仮定し、次の事柄を書き出してみる。左は弊社で使っている、ホームページ制作の際のお客様への確認項目の抜粋である。  

  1. 強調したいキーワードは 
  2. ホームページで達成したいことは(※ホームページからどんな効果があれば、価値があるのか) 
  3. ターゲット顧客は誰か 
  4. 今後集めたい・増やしていきたい顧客は 
  5. 自社で一番力を入れていることは 
  6. 自社の強みや弱みは何か。顧客にとって、どう違いがあるか 
  7. 顧客に持ってほしいイメージは何か。(若々しさか落ち着きか、親しみやすさか憧れか、先端か伝統か、都会的か牧歌的かなど)具体的なイメージを表す色・シンボル・画像等があれば、さらに良い 次に、市場において自社の製品がどこに位置づけられるのかを明らかにするために、競合商材について次の事を調べてみよう。

【ステップ2】

  1. 類似商材を扱う競合会社のホームページを数社探す 
  2. 顧客として見て、魅力的かどうかを経営幹部など数人と話し合う 
  3. 優秀なホームページであると判断したものについて、ステップ1で挙げた事柄を競合について書き出す 
  4. 自社のホームページに戻って、競合と比べてより独特のポジションを確立させるためにどうするか、再度検討し、ステップ1で書き出したものに追加していく。  

これらの実践を行うことで、今までぼんやりしていたポジショニングがより明確になっていくはずである。

[ 戦略経営者(株式会社TKC発行) 2010年10月号記事 ]
執筆:アイ・モバイル株式会社 代表取締役 デービット・リーブレック
【プロフィール】
アメリカ、オレゴン州生まれ。
ジョージタウン大学でMBA取得。 大学時代には交換留学生として、早稲田大学ビジネススクールで学ぶ。東京銀行ロンドン支店P&G勤務後、コンサルティングのBooz Allen & Hamilton社(東京及びサンフランシスコ)のマネージャーを経て独立。
2000年にアイ・モバイル株式会社を創業。

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