実践編 第3回 SWOT分析を活用する

 簡潔で効果の高い分析法

今月は、SWOT分析とその活用についてご紹介したい。左の図をご覧になっていただきたい。SWOT分析とは、S(Strength=強み)、W(Weakness=弱み)、O(Opportunity=機会)、T(Threat=脅威)の四つの頭文字をとった略語で、内部環境分析(強み・弱み)外部環境分析(機会・脅威)に分類することができる。特に強みと市場の機会が交差するところが、売上や利益が向上するビジネスチャンスとなる。ヒト・モノ・カネなどの制約がある中小企業では、いかに強みのある製品やサービスを市場機会の中で伸ばしていくかが重要である。勉強熱心な経営者なら幹部社員と一緒にSWOT分析を行ったことがあるかもしれないし、顧問税理士の先生に勧められて一緒にクロス分析図を作られた方もいらっしゃるかもしれない。いずれにしろ、非常に簡潔で効果の高い分析法である。

 経営改善計画にも使える

現在、金融庁が公開している「金融検査マニュアル」では、債務者区分(※)の検証ポイントとして、経営改善計画の策定が明記されている。そこでどの区分に分類されるかによって融資条件も変わる。金融機関に融資やリスケジュールを依頼しに行くと、「経営改善計画」の提出を求められるわけだが、まだ提出にまでは至っていない企業も多いようである。債務超過に陥っていない企業であっても、「経営改善計画」を策定し、強固な経営基盤の構築を心がけていることを金融機関に伝えておくと融資を引き出す際に有効である。経営改善計画策定のフォームは各金融機関の指定のものがあるだろうが、その計画の中身をつくるには、SWOT分析が有効である。 既存の商品を今のやり方で売っているだけでは、大きな利益が出るはずがない。自社の強みを現在の市場環境で活かして増収をするというプランを組み立てることで、説得力のある経営改善計画ができるのである。  

※債務者区分(一、正常先、二要注意先、三、要管理債権先、四、破綻懸念先、五、実質破綻先、六、破綻先)。

 顧客の視点を切り口に…

実際にSWOT分析を進めるために大切なのが、自社が把握する強みだけでなく、顧客の視点で分析することで現在の殻から抜けることである。社長や社員が認識している強みは、本当に正しいのか。顧客もそれが理由で、あなたの会社の商品やサービスを買っているのだろうか。第一回・第二回の講座でも述べたが、ここでも「顧客の声を聞く」ということは非常に重要である。自社の強みを考えるとき、あくまで主語は「顧客」にして、「顧客が思うわが社の強みは?」と考えてみよう。  

弊社で提供している『顧客力診断』という調査サービスでは、経営者を含めた自社の人間と顧客との双方に、その会社の強みをリサーチするのだが、ここで多くの会社がギャップを見つけて驚く。

スタッフと顧客間のギャップ

たとえば、先日行ったパチンコ店での調査では、店長やスタッフは、自分たちの強みは「常連顧客の顔を覚えていること」や、「立地の良さ・駐車場の大きさ」であると思っていた。ところが、顧客によると、このパチンコ店に来る理由としては、それらの要素もあったものの、休憩コーナーや通路の広さなど、「快適な店内設備」が魅力として指摘された。その結果を受けて今後、この店では店内環境をさらに改善して、高齢化する顧客層や禁煙化にも対応すること、メールマガジンで若い人にも新しい設備を伝えていくことなどが検討された。  

別の衣料品販売店で行った顧客力診断では、自社スタッフは、強みは「老舗であること」、「スタッフがほとんどの顧客と顔見知りであること」と考えていたが、顧客に調査をすると、「商品の品質の高さ」や、「スタッフの接客の質(親しみやすさ、顧客の好みの理解)」であることがわかった。

今後は、スタッフを単なる顔見知りとしてではなく、より専門知識を持ったプロとしてアピールしていくことになった。 また、今後の「機会」として、ベテランのスタッフがいる点を「強み」の要素と考えて、介護施設での出張販売などの事業も検討されることとなった。  

このように、SWOT分析をいろいろな視点で行いながら、経営のブレイクスルーを実現するための中長期計画策定に役立てていくと良いと思う。

新しい時代の市場機会

最近は、インターネットの普及で今までにはできなかったことが実現できるようになったことも強調しておきたい。  

今も昔も販路を広げるということは大きな機会創出だが、一方で非常に難しいことである。ただ、一昔であれば全国に販路を広げるには物理的に店を持つ、代理店を使うということくらいしか考えられなかったが、今はインターネットで店を開くことで全国の消費者にモノやサービスを売ることができる。しかも日本国内に限らず、海外で販売することも可能であり、企業間国際取引サイト『アリババ』などは日本企業も多く利用している。国際取引に関しては、従来は言語の壁もあったが、翻訳サービスもかなり発達してきており、使い勝手も飛躍的に向上しつつある。中小企業にとっては大チャンスである。

脅威にも目を向ける

とはいえ、新しい機会は平等に競合他社にも与えられている。国内だけでなく世界中に、だ。最近は、中国をはじめとしたアジア新興国の発展がすさまじいのは実感されることも多いだろう。あなたの会社の製品サービスはどの程度の国際的脅威に立ち向かえるのか、グローバルで生き残るためにどうすれば良いのかも意識すべきだろう。  

東京の街を歩いていると、中国語や韓国語を日常的に耳にするようになった。彼ら向けのサービスもどんどん充実している。全世界の人が我々の顧客であり、我々のライバルとなる。機会も脅威も広がっているのである。

[ 戦略経営者(株式会社TKC発行) 2010年9月号記事 ]
執筆:アイ・モバイル株式会社 代表取締役 デービット・リーブレック
【プロフィール】
アメリカ、オレゴン州生まれ。
ジョージタウン大学でMBA取得。 大学時代には交換留学生として、早稲田大学ビジネススクールで学ぶ。東京銀行ロンドン支店P&G勤務後、コンサルティングのBooz Allen & Hamilton社(東京及びサンフランシスコ)のマネージャーを経て独立。
2000年にアイ・モバイル株式会社を創業。

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