基礎編 第8回 チャネル戦略をどう行うか

まず、自社ビジネスの全体像を再確認する。そのためにビジネスモデル図を書くことをお勧めする。ビジネスモデル図の書き方は次の通り。  

登場するプレーヤーを書き出す。  

 1.プレーヤーの間を3種類の矢印で結ぶ。3種類の矢印とは、製品やサービス提供の流れ/情報の流れ(プロモーションや受発注)/お       金の流れ、の三つ。  

 2.図を整理整頓する。  

 3.自社と顧客の間には「製品やサービス」「情報」「お金」という三つの流れが存在する。この流れを妨げる原因は、所有権移転の難       しさ /物理的な距離/時間の不一致、など。この原因を取り除くことがチャネル選定の目的だ。 チャネルの主な機能は下記の通り。   

▼見込み客、既存客、競合他社などの情報を集める。  

▼購買を刺激するコミュニケーションを開発し、広める。  

▼営業をクロージングする。(合意と移転)  

▼売り主に注文する。  

▼流通在庫のコストを支払う。  

▼チャネル業務を担う上でのリスクを引き受ける。  

▼有形製品の継続的な保管と輸送を行う。  

▼買い手の支払いを助ける。 次にチャネルの主な機能を顧客視点の表現に書き換えてみる。  

▼私たち顧客の行動や欲求を理解している。  

▼私たち顧客の欲求を満たしてくれる他社についても良く勉強している。  

▼私たち顧客の潜在的な欲求を引き出す能力がある。  

▼安心して一歩を踏み出せる。安心して任せられる。  

▼欲しいモノやサービスがそろっている。品揃えが良い。  

▼トラブルがあっても安心できる。トラブル時の対応が良かった。  

▼補充や修理の点で安心できる。  

▼支払いが楽だった。いつもの方法で支払えた。  

以上がチャネル評価のポイントだ。まとめ直すと下記の通り。  

 1.ロットの大きさ  

 2.顧客の生活や業務に合ったロットサイズで提供できるか  

 3.待ち時間と配達時間 顧客のニーズを満たすスピードで製品やサービスを届けられるか

  4.空間的利便性 顧客の活動場所から十分に近い場所で、製品やサービスを提供できるか

  5.製品の多様性 顧客の目的を満たすための十分な品揃えができるか

  6.サービスのバックアップ 附属のサービス(課金・決済、配送、取り付け、修繕など)は優れているか

 インターネットが担う機能は

ところで、チャネル機能の中でインターネットはどのような機能を担うことができるのだろうか。 インターネットは、潜在客や見込み客が普段どんな行動をし、どんな発言をするのかを記録することができる。他社情報を比較することも、その情報を自動で更 新することもできる。よってある意味では、顧客と競合を良く理解しているとも考えられる。しかし、インターネットが主体的に顧客とコミュニケーションをと ることはできない。インターネットは受動的な営業チャネルとして活用可能だが、積極的な営業には向いていない。  

インターネットを経由して企業とコミュニケーションをすることもできる。人とのコミュニケーションでわざわざインターネットを介するのは、電話や対面よ りもインターネットを介したコミュニケーションを顧客が好む場合だ。インターネットを好む顧客は「いつもの行動」がインターネット上で行われるので、わざ わざ行動の場を移さなくても次の行動を起こせる事を喜ぶ。  

ただし、顧客はどんな手段でコミュニケーションしているかに関係なく、何らかの目的で一連のコミュニケーションをしているため、その後のコミュニケーショ ンをインターネット以外(電話や対面)でした際も、それまでの続きのように対応せねばならない。インターネットをコミュニケーションツールとして活用する 場合は、他の業務プロセスとの情報整合性に注意が必要である。  

チャネルとして別の企業を選定しても、顧客から見るとチャネルは自社とイコールであり、「別の企業なので…」という言い訳は受け入れられない。よって企 業は、チャネルメンバーを自社メンバーと同等に教育しなければならない。 チャネルメンバーに必要な知識やスキルを定義し、評価し、教え、育てなければならない。 教育プログラムと評価の仕組みを開発し、実行する必要がある。自社のメンバーを教育するよりも体系的で分かり易くなければならない。チャネルメンバーがロ イヤリティーを持つためには、教材の出来映えにも気を遣い、重厚かつ良いデザインに仕上げるという手法もある。また、数ヶ月間は自社の社員と一緒に業務を こなすという教育もある。教育コース受講後に試験を実施し、プロフェッショナルとして認定するという認定制度を設けるのも良い。

 PDCAを回し続ける

市場(顧客の行動様式や外部環境)は、常時変化している。よって、一度チャネル選定をし、仕組みを構築したからと言って安心してはならない。 市場が順調に育って魅力的になってくると、競合が出現する。チャネル機能も含めた差別化をしなければならない。順調に市場が拡大する時には、遅滞なくチャ ネル機能も拡大すべきなのだが、在庫や設備などの先行投資には資本力 が必要。顧客の行動変化に合わせて機能を進化させることも重要だ。支払い方法にクレジットカードが多くなりそうならば、取扱クレジットカードを充実させ、 決済手数料を下げる交渉をし…など。電子マネーが広がってきたらどうするかも課題だ。  

製品ライフサイクルのステージによってもチャネル機能を変化させる。導入期は顧客教育とロコストオペレーションが得意なパートナーが良い。成長期には、積 極的なプロモーションに投資できるパートナーが良い。成熟期は…。常時、チャネルマネジメントのPDCAサイクルを回す必要がある。

 マルチチャネルとコンフリクト

マルチチャネル・マーケティングとは、企業が複数の顧客セグメントに到達するために複数のマーケティングチャネルを使うことである。チャネル 計画を立てる際には、一九九〇年のハーバードビジネスレビューにモリアーティとモランが提案した上記のハイブリッド図が役立つ。  

どんなにうまく設計して管理しても、それぞれのチャネル間で利害が一致せず、コンフリクトが起こることがある。コンフリクトの最も大きな原因は「目標の 不一致」である。メーカーは短期のシェア確保をしたいのに、ディーラーは顧客単位の利益を最大化したいと考える。チーム全体のビジョンを共有し、戦略ポイ ントを合意するために、コミュニケーションの回数を増やす必要がある。  

「役割と権利の不明確さ」もコンフリクトの原因になる。役割と権利を具体的に説明し、事例で示し、納得いくまで意見交換する。  

また、時とともに認識は変化していくので、定期的なコミュニケーションは欠かせない。 チャネルの設計、合意形成、マネジメント、どのフェーズでも顧客の視点を意識し、顧客の言葉で考え、議論することを忘れてはならない。

[ 戦略経営者(株式会社TKC発行) 2010年3月号記事 ]
執筆:アイ・モバイル株式会社 代表取締役 デービット・リーブレック
【プロフィール】
アメリカ、オレゴン州生まれ。
ジョージタウン大学でMBA取得。 大学時代には交換留学生として、早稲田大学ビジネススクールで学ぶ。東京銀行ロンドン支店P&G勤務後、コンサルティングのBooz Allen & Hamilton社(東京及びサンフランシスコ)のマネージャーを経て独立。
2000年にアイ・モバイル株式会社を創業。

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