【世界のITイノベーション最終回】次世代ビデオ会議のすごさ

これまで、世界中のITイノベーションをご紹介する機会をいただきました。試してみよう、可能性を考えてみようというきっかけになったでしょうか。シリーズ最後となる今回は、意外に注目されていませんが、おもしろくなりつつあるビデオ会議の最新事情をお伝えします。

さまざまな用途に対応

ビデオ会議を行うための機器は、大型専用機、携帯機を問わず、良いものが続々出現しています。通信の品質も、かつてほど問題にならなくなってきました。10年前のビデオ会議システムは高価で専用ルームが必要でしたが、今では私の3歳の娘がスマートフォンのスカイプを使って、祖母と話すほど身近なものになっています。実は今、それを止めさせるのに苦労しているところなのです。

 ビデオ会議を活用しているある機器修理会社の話を最近聞きました。この会社では、全員が専門家レベルの高い知識をもっているわけではありませんが、スマートフォンを上手く活用してそれを補っているのです。現場で修理を行う職人がやっかいな問題にぶつかった時は、専門家にスマートフォンから電話をします。その専門家はスマートフォンのカメラを使って送られてくる映像を見ながら問題を診断します。専門家は目と脳、現場にいる職人は手を使って解決するのです。これによってコスト削減と顧客満足の両方を得ることができたといいます。またこの手法は、さまざまな種類のビジネスシーンや活動に利用できます。たとえばアメリカ陸軍では、ヘルメットにカメラをつけて現場の状況を報告しています。建築現場の管理者や建築家が工事の状況を確認することも可能ですし、製造業のラインで遠隔地の現場作業員が話し合いながら、生産状況を確認したり、活動の記録をつけることもできます。 

遠く離れた者どうしが人間的につながることも可能にします。デンマークの南にある、ヴァンドボルグサンドという町は、6万5000人の市民が、900キロ平方メートルという広範囲に住んでいます。そのため町はシスコ社のビデオ会議システムを導入し、住民がわざわざ庁舎に出かけなくても、近くの施設で用をたせるようにしました。とくに高齢者にとっては、顔を合わせてのコミュニケーションはもちろん大切ではあるのですが、やはり長い距離の移動は大きな負担になります。アメリカのある会社では、3つのビデオカメラとHDテレビを駆使し、本社の受付が遠く離れた地域の支社の受付を務めている例もあります。 

人事や採用の局面でも使えます。面接のために、長距離を旅行して来てもらうよりは、ビデオ会議の面接でスクリーニングをして、直に会うかどうかを決めるほうが効率的でしょう。ビデオ会議には録画機能があり、後で見ることができるので、次の候補者面接に安心して移ることができるのも利点です。あるいは、ライブでストリーミングビデオを流して教えている学校もあり、教育の場を広げることにも貢献しています。 

新世代のビデオ会議は、書類を共有するのも簡単で、スクリーンに映し出してそのポイントを指し示すことも出来ます。この原稿も、私と日本のスタッフがWebEx というサービスで打ち合わせをし、コンピュータ上の資料や、ネットを検索して出てきたアマゾンでの最新ビデオ機器のページなどを一緒に確認しながら執筆しました。画面に手書きのコメントが書けるのも便利です。

 新しい交流の機会にもなります。先日、日本の友人が、女性社長だけのウェブ交流会に参加したと教えてくれました。Google Hangout というビデオサービスを使い、それぞれのオフィスで、お酒を片手に、ビデオで顔を見ながら経営について語り合う。時間も場所も超えて有意義なヒントを得られたそうです。これらはみなビデオ会議の新しい活用方法です。ご興味のあるものを利用されると良いでしょう。

コストをかけずシンプルに

現在最高級とされるビデオ会議は、シスコのシステムでしょう。とても高額なので、ものによっては25万ドルもかかります。 

しかし最近、ハイビジョンビデオカメラをテレビにつけて使う安価な方法が普及してきました。Logitechとtelylabs などは、15 0 ドルから200ドル程度で専用ビデオ会議室で使われているようなハイビジョンテレビ用カメラを販売しています。マイクも高品質です。安価なカメラで、突然、素晴らしいビデオ会議システムを持つことができるのです。設定をあれこれ悩まなくても、ハイビジョンのテレビさえあれば、オフィス内でも客先でも、すぐに立派なビデオ会議室ができあがります。かつては、参加者が一つの電話番号を使用して電話会議を始めるというやりかたが一般的でした。最近では、ブルージーンネット(Bluejeans.com) のように、異なるビデオサービスや機器を橋渡しし、スカイプを使っていてもWebEx でも関係なくコミュニケーションできるサービスも生まれています。これまでは複数の参加者に共通のシステムにログインしてもらうためには、煩雑な設定手続きが必要だったのですが、それがなくなります。とくに顧客対応用であれば相手は違うシステムを使っているでしょうから、負担が大幅に減少します。   

ビデオ会議システムのトップに位置するのは、専用ビデオシステムのシスコ、ウェブベースのアプリであるマイクロソフトのスカイプ、シスコのWebEx、GoToMeeting(シトリックス)、Adobe Connect (アドビ)が挙げられるでしょう。スカイプは現在マイクロソフト社が保有し、アウトルックと統合されています。5000万人以上とユーザー数は一番多いようですが、ビジネスより家庭での利用が多くなっています。 どのシステムを選択すべきかは、あなたがどのように使うか次第です。重要なのは、シンプルにすることで1.複雑な設定に時間をかけないこと2.顔を合わせたり書類を共有する必要がある時だけにする3.どうして顔を見て話したいか、それがビジネスにどう役立つかを考える……ことを心掛けてください。   

ハードウェアの品質がもっと向上し、どこでも誰でも使える技術となれば、ビデオ会議は単なる会議ではなく、より幅広く人を巻き込み、より効率的なコミュニケーションの場となるでしょう。

オリバー・C・チャブ
アイ・モバイル株式会社 取締役
 

アメリカニューヨーク州生まれ。スタンフォード大学MBA取得。
日商岩井で東京都都市開発プロジェクトを行い、日本の環境庁で政策提案を行うなど、日本で幅広い経験を持つ。
数々の会社を立ち上げ、アメリカのパートナーにアドバイスを提供する。サンフランシスコ在住。

last update:5月7日

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