【世界のITイノベーション第10回】連携で広がるビジネスの可能性

情報収集はビジネスの要。私の場合、ウェブ上の情報誌(TechCrunchやWiredなど)に加えて、GoogleアラートやHootSuite など、情報を収集するために活用できるウェブ上のサービスを用いています。これらはスマホからも簡単にアクセスできます。しかし、それ以外に最近増えてきたのが海外にいる友人にフェイスブックで聞いてみる、という方法。自分とは異なる視点が見えて有意義です。

そこでふと気づきました。かつて自分一人だけで収集していた情報を、最近では友人・知人との関わりの中で得ることも増えてきたな、と。今回はこの「協同」をキーワードに最新事例を見ていきたいと思います。

 ソロモとオー・ツー・オー

「SoLoMo」(ソロモ)とは、ソーシャル(Social)、ローカル(Local)、モバイル(Mobile)の頭文字を取ったもので、最新ITマーケティングにしのぎを削る米国企業で注目を集めている戦略です。「ソーシャル」では月間利用者数が10億人を突破したフェイスブックをはじめ、無料通話アプリとして人気を博したLINEのユーザー数が1億人を突破したのも記憶に新しい話です。「ローカル」ではGoogle+ローカルやAroundMeのようにモバイル端末の位置情報をベースに店舗検索をしたり、クーポンを配信する仕組みが普及してきました。「SoLoMo」ベースの新しい技術とサービス創造により、情報アクセスや利便性を向上しビジネスチャンスを広げることは、利用者にとっても事業者にとっても喜ばしい進化と言えるでしょう。   

これに加えて最近はO2O(オー・ツー・オー)という言葉も見かけるようになりました。「オンライン・ツー・オフライン」の略で「ネット上の情報や活動を活用して実店舗での購買活動にもつなげる」考え方や戦略です。オンラインだけで全てが完結するビジネスはまれで、最終的には来店や購買を促進する必要があるので、集客もネットのみにこだわらず、実店舗やさまざまなリアル世界の活動を含めて考えていくようになってきています。例えばネット上でクーポンを発行し来店を促進するのがその施策の一つです。 

これらのトレンドから読み取れることは何でしょうか。「SoLoMo」はいうなれば新しい技術(ソーシャル・モバイル)と地の利(地域利便性)を絡めて新たな「結びつき」を作るきっかけを提供しているといえます。O2Oはそうした「結びつき」をネット上だけのものとせず、実際の来店や、物理的に「会う」という行動を通じて深化させていく活動です。とすると、SoLoMo 戦略を通じて、事業者同士がお互いに「会って」連携できるような仕組みが出来たらもっとビジネスチャンスが広がるのでは── どうやら、この辺りにその先のITマーケティングの進化の兆候を見ることができそうです。

そのようにして「連携」「協同」する最新の事例が、アメリカにあります。この連載でも取り上げた3Dプリンターはまだ高額で、所有者も限られ、専門業者による「3D印刷」も高額になりがちです。そこでMakeXYZ.comでは、プリンターを使いたい人が、近くの「会員である」プリンター所有者に「印刷」の依頼を行い、対価を払うための仲介をウェブ上で行っています。プリンター所有者も、常にそのプリンターを稼働させているケースはまれなので、空いている時間に隣人からの依頼に応えることで利益を得られるという、ウイン─ウインを実現しています。同じ地域の人同士がウェブサービスを通じて知り合いになり、互いにメリットを得られるビジネスを提供できているわけです。  

また、Saber Blast というサービスでは、ソーシャルメディアを活用したマーケティングを行う際に、中小企業同士で連携し、お互いのコンテンツをリツイートしたりシェアしたりすることで互いのメディア露出を高め、結果として集客が図られるような協同事業化を促進しています。大企業のように莫ばく大だいなコストをかけられない中小企業ならではの共同戦線です。同サービスのHPには「他業種ビジネスとチームを組んで新規顧客を獲得しよう」と書かれています。ホテル事業者が同じ地域のレンタカー業者や観光業者と連携する、などが想定されているようです。  

このように、ネットを媒介にした「連携」が注目されてきています。中小企業におけるITマーケティングの手法は、従来は大企業にならうことが多かったのですが、今後の成功パターンの一つは、このような連携から生まれるのかも知れません。  

当然、こうしたサービスが日本で成長してくる前に、現在ある自社ホームページやスマホ用ページを活用することで、同様の成果を得ることも可能です。とくにHPは単なるブランディングツールや集客ツールから、具体的な成果や目的を志向するツールに変貌しつつあります。海外向け情報、求人募集、ネット販売、ネット注文窓口などに加えて、「連携」募集という文字を入れておくことで新たなビジネスの広がりが生まれるかも知れません。所有しているメディアは武器です。ぜひさらなる活用をご一考ください。  

この記事への感想や疑問、今後興味のあることなどがありましたら、ぜひお知らせください。  

*この記事は、株式会社TKCが発行する雑誌「戦略経営者」2013年4月号の経営スクランブル(戦経セミナー)に掲載されています。

古屋 亮太(ふるや りょうた)
アイ・モバイル株式会社 社長室 

早稲田大学卒業。ピッツバーグ大学公共政策・国際関係大学院修士。外務省系の財団に勤務後、ネットマーケティング企業(現:楽天リサーチ)の立ち上げに参画。以降、日本ユニシスなど複数の企業において経営戦略・新規事業開発などに従事、多くの戦略策定やネットマーケティングツールの開発を行う。

last update:4月2日

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