【世界のITイノベーション第2回】”リアルタイムな広報”の威力

皆さまの会社には、広報部はありますか。 総務部や販促担当が広報を兼任されることもあるでしょうが、今まで広報活動として、どのようなことをされてきましたか。  

情報伝達手段の発展により、広報の役割は変化しています。全米PR協会は、昨年の11月「広報を再定義する」というキャンペーンを行い、インターネットで190件もの案を集め、それらへの意見も公開して話題となりました。今年3月、最終的に選ばれた定義は次のようなものでした。  

「広報とは戦略的コミュニケーションであり、企業・団体と社会が、相互に有益な関係を築く過程である」

 無料で広告を上回る効果が…

確かに広報とは、顧客や取引先、地域社会などに自社を理解してもらう幅広い活動を含んでいます。ホームページや会社案内、パンフレットなどを通じて正しい理解を促し、マスコミに記事として紹介されるよう働きかけ自社の知名度や信頼性を上げていきます。お金を出して行う広告とは異なり、無料での活動であるため紹介される保証はありませんが、いったん第三者から発信されると信頼性はより高くなり、ニュース性があるとして広く告知されれば、広告の何倍もの効果があります。  

当社でも新サービスが出るたびにマスコミ各社にプレスリリースをしています。新製品や改良品が出たときが広報のチャンスです。紹介記事をA4サイズの紙1〜3枚にまとめて、新聞社やテレビ局にファックスで送ります。こういった旧来のメディアではファックスが目に止まりやすいのでファックス送信は最低限行うべきでしょう。しかし最近は効率的なインターネットのプレスリリース配信サービスも各種あり、@Press(アットプレス)ValuePress !(バリュープレス)などを利用しています。有料版でも3万円代と安価で、原稿校正や配信先メディア選定、掲載数の調査報告もあり、とても便利です。  

テレビ局や新聞社などは、毎日数百件の新製品情報を受け取るので、掲載される確率は数%でしょう。しかし継続的にプレスリリースすることが大事で、意外な所から問い合わせが来たり、知らないうちに掲載されたりするものです。

マスコミの注目をひくには

当社でも、新聞や雑誌などでニュースが紹介され、取材いただくごとに記者と面識を得て、親交を深めることで掲載率もだんだん上がってきています。記事になった後、急に売上アップとはいかなくとも、じわじわと漢方薬のような効果が出ることも。アイ・モバイルの新聞掲載記事 新製品・サービス・人材紹介などいろいろな話題でたとえば、ある新製品の記事を見た大手企業から後日問い合わせがあり、大きな提携話につながったり、商談中のプロジェクトが加速したこともありました。  

また、当社は社長がアメリカ人でありながら日本で起業したので、その経緯への取材や英語番組のインタビュー、「社長の仕事力」など、人物に焦点をあてた記事になることもあります。中小企業の社長さんは、ユニークで魅力的な方が多いので、起業に至るドラマや、会社への夢など、ストーリーをまとめて発信すれば、マスコミから注目される機会もあるかもしれません。  

また、記事として紹介されるのは一度きりのことですが、「◎◎新聞で紹介されました!」と自社のホームページで掲載するのも、会社の信頼性を上げるのに良い方法で、採用や営業のイメージアップになります。  

媒体によっては紹介された記事をそのままホームページに掲載することを許可しているところもあるので確認してみましょう。マスコミに紹介されないとしても、自社のHPでニュースを掲載するのは検索エンジン対策になり、忘れたころに問い合わせが来ることもあります。

革新的PR賞『ブリッジ』

最近の大きな変化は、インターネットやSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の誕生です。マスコミだけではなく一般の人が情報発信力を持ち、注目すべき広報媒体になりました。

アメリカのPRWEEKが主催する2012年「革新的PR賞」を受賞したのは、ゴリンハリス社の「ブリッジ」というサービスでした。「ブリッジ」は、24時間無休で稼働する、複数の国に置かれたセンターの呼び名でもあります。ここでは、PRの専門スタッフが、テレビ・新聞・ブログ・ツィッター・フェイスブックなどあらゆる媒体の情報や、人々のネットでの会話を、分析ツールを用いながら世界中でリアルタイムに観察します。そこで得た情報を元に、関連ニュースを自社メディアやフェイスブックで発信するなど、迅速な対応をしていきます。たとえば、このブリッジを通じて、オバマ大統領が「今年最高の教師賞」を化学の先生に贈ることをゴリンハリス社がつかみました。すぐに化学品メーカーのダウ・ケミカル社に連絡し、ダウ社は即座に公式のお祝いを発表。そのことがマスコミのニュースになり、同社の評判を高めたそうです。

中小企業でもできる!

ブリッジのような広報活動は、大手企業しかできないと感じた方もおられるかもしれません。しかし、小さな組織でも同じような手法で広報を行い成功している例があります。京都の街を地元のガイドさんと一緒に歩く「まいまい京都」は、2012年春に93のコースを提供し、広報活動だけで1500人の参加者を集めました。地元の住民がガイドを務める、ユニークなまち歩きのイベントとして、テレビや新聞に何度も紹介されました。  

代表の以倉敬之氏によると、「こちらから情報を発信するだけではなく、京都に関してツイッターやブログで話題にしている人を探してフォローし、毎日ネット情報を観察しました。『チラシを置いてくれるところはないですか』とネット上でつぶやくと、『お店に置いてもいいですよ』と、店舗から直接反応があるなどコミュニケーションの輪も広がり、活動しやすくなりました」とのことです。 

参加者の81%が「大変満足」と評価するなど、満足率も高く、参加時の様子を個人ブログに書く人も多いので、それを紹介し、地道な広報活動を行いました。その結果、夏のコースはインターネット上の告知だけで、1週間以内にほとんどのコースが満員になったそうです。 

 ITを活用した広報は、今後中小企業のイノベーションを推進する強力なツールになることは間違いないでしょう。

この記事への感想や疑問、今後興味のあることなどがありましたら、ぜひお知らせください。 

*この記事は、株式会社TKCが発行する雑誌「戦略経営者」2012年8月号の経営スクランブル(戦経セミナー)に掲載されています。


西山 裕子(にしやま ひろこ)
アイ・モバイル株式会社 マーケティングPRプロデューサー

大阪大学、同志社大学大学院ビジネス研究科卒業。経営学修士。 プロクター・アンド・ギャンブル・ファー・イースト・インク (現P&Gジャパン)でのマーケティングや市場調査を経て、 アイ・モバイル社の創業時より参加。現在は、マーケティングや 新製品のプレスリリースなどを担当

last update:8月6日

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